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2009年11月21日 東海新報より

大船渡港北部工業用地進出の展望は――
岩手産の拠点施設に 来月起工 食品加工場前倒し整備

 宮城県気仙沼市に本社を置いて水産事業などを手がける株式会社阿部長商店(阿部泰浩代表取締役)は、来月から大船渡市大船渡町に位置する大船渡港北部工業用地(約四・五ヘクタール)で新たな工場建設を始める。この用地は八年前にヤマハ大船渡ケミカルが撤退して以降、長年市政課題として取りざたされてきた経緯があるほか、同市としては平成に入り最大規模の企業誘致となる。阿部代表取締役に工場進出の目的と今後の展望を聞いた。

 ――大船渡工場の着工や稼働時期、雇用規模は企業立地調印時の計画と変更はないか。
 阿部 現在の予定では十二月十八日に起工式、一月六日の着工。七月末に引き渡しを終え、八月から操業開始となる予定。冷凍、冷蔵施設から始まり、雇用は五 十人ほどのスタートを予定している。今年九月から雇用を始め、現在は大船渡市内在住の六人を採用しており、気仙沼市内で研修している。
 平成三十一年に食品加工場を建設する計画だったが前倒しして、二十三年までに操業を開始したい。これまでは別棟で建てようと思っていたがコスト面を判断した。
 海外向けを中心に考えていたが、昨年のリーマン・ショック以降の流れをみると、国内バランスも考えた方が経営的にも良いと考えた。サンマの加工は現在、気仙沼市の「マーメイド食品」で行っているが忙しい状態。大衆魚として、季節を問わない年間商材になっている。現在の工場の生産能力を超えることが考えられ、早めに立ち上げることで充実させ、加工分野で伸びていこうと考えている。
 大船渡に進出することで、大船渡にあるサンマを優位的に扱える。大船渡でやる以上は大船渡で獲れるものの価値を高めたい。
 ――進出を決意するまでの経緯はどのような流れだったのか。
 阿部 気仙沼ではこれまで生鮮を中心にやってきたが、安定供給や付加価値加工、海外輸出と求められる環境が変わってきた。数年前から今の工場のあり方では限界を感じていた。気仙沼には敷地がなく、工場は市内に点在していて拡張もできない。
 大船渡市の関係者がコンテナ航路活用で聞き取りに来た中で、これほど広い土地は気仙沼にはなく、活用されないままであることを知った。十年先、二十年先を考えても「生かしようがある」と徐々に思うようになってきた。大船渡には北里大があり、何人か採用もしている。産学官連携できるもの大きな魅力の一つだ。
 ――大船渡工場の位置付けは。
 阿部 岩手産を扱う拠点施設。産地ブランドが大事になる中、量販店からは宮城産か岩手産かきちっと区別して売るように言わる。獲れた場所で価値を高めるのが我々の商売。宮古、釜石、大船渡など岩手県で水揚げされた魚をブランド化して出せる工場にしたい。
 ――現在建設が進められている新魚市場に対する期待は
 阿部 進出する上で大きなポイントとなった部分。高度衛生管理が徹底されている施設は日本であまりなく、完成すれば日本でも一番といえる。
この意味合いは非常に大きい。
 新工場もHACCPを取得できる体制になる。原料向けだけでなく、製品としても欧米に輸出できる。原料を加工するアジアの工場にワンクッション置かなくても、例えばサケの加工であれば我々でもできる。原料を持っている強みを生かしたい。
 大船渡は気仙沼に比べて沿岸漁業が栄えており、安定的に獲れる。安定度や地域の強みを生かした形で生産したい。加工ではサケ、サバ、イカなど前浜で獲れる魚は全て扱いたい。
 ――世界不況の影響が続く中、大船渡からのコンテナ冷凍輸出は苦戦が続いている。現状と今後の見通しは。
 阿部 昨年の秋以降、若干勢いはなくなっているが、魚食には潜在的な需要がある。今後も大衆魚は十分進出の余地がある。
 中国では自分たちで販路を作ろうと、先月には大連などに現地法人を立ち上げた。人口があって、魚を食べる人たちが増えている。日本からも量販店や外食企業が進出している中で、私たちの役割はあるだろうと考えている。原料を持っている強みを生かして、現地のニーズを把握しながら展開したい。
 ――観光部門も積極的に展開しているが、岩手進出への考えは。
 阿部 将来的にはあるかもしれないが、今ははっきりとは言えない。我々は地域の資源を生かすことを経営理念に掲げている。観光は水産とともに伸びてきたので、チャンスがあったり条件があえば考えたい。
 ――進出は産業振興面で歓迎される一方、中小規模の水産会社の中には脅威ととらえる声も一部にある。市内企業との「共存」のあり方は。
 阿部 確かにこうした声も聞くが、水揚げしたものを根こそぎさらうつもりはない。中小業者は小回りが利く良さがあり、ある程度すみ分けの形が今後出てくるだろう。商売上のぶつかりは避けられない部分もあるかもしれないが、我々は地域の中で仕事をし、外様のようにせず根を張った形で頑張りたい。