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2013年1月1日 週刊水産新聞

販路どう回復 三陸加工業界
阿部長商店社長の話 消費地との距離感どれだけ縮めるか

 大震災発生からもうすぐ丸2年。県や市町村間で差はあるものの、新年は復旧が着実に進み復興への道筋を見いだす取り組み開始に期待がかかる。「水産業の課題は販路の回復だ」と岩手・宮城の両県で展開する株式会社阿部長商店の阿部泰浩社長はいう。設備が整い原料を確保できれば生産は可能だが、被災休業で途絶えた販路の回復は容易でない。(中略)
 震災前と同じでは、三陸の水産業は成り立たず、新年は大きな変化の始まり。産地と消費地の距離感を、どれだけ縮めるかだ。消費地との距離感の大きさは、震災前から抱えていた水産業界の問題。
 マーケットは待ってくれず、受け身でいては成り立たない。自らつくって手売りするくらいの覚悟で消費者に近づいていく。そうでなければ、せっかく復旧した設備を活用できない。
 規模の大きい産地市場は、平成27年度までにすべて衛生管理型に整備される。また東京・築地の大消費地市場が26年度内に豊洲に移転する。いずれも最新設備が整うが、相応のコストもかかる。今後1、2年で流通は目に見えて変わっていくだろう。
 生産・加工も一歩前に出て変わらなければ。漁業者と加工流通業者はコミュニケーションを図り消費者に顔を見せ、生産コストに見合った、末端主導に偏らない価値を創出していくことが大事だ。
 コスト増大は産地加工業界も同じ。施設を建て直し設備を導入、従業員の賃金も上げなければ集まらない。コストを吸収できる価値を生み出すためには、販売チャネルを変えたり新しい流通システムを築いたりすることも必要。
 震災でこれだけ傷ついて、すべてをなくしたのだから、いろんな実験をしてもいい。思い切って挑戦し変化しなければ仕事ができない。斜陽産業になるのか成長産業になるのかの岐路。ここ1、2年が大きく変わるタイミングだ。
 当社でいえば、商品開発力の強化に力を注ぐ。観光ホテルに所属する調理師らによる企画と工場での製品化、パッケージなど販売戦略とテスト販売を経て商品化。「ファストフィッシュ」認定取得も視野に、流通大手に展開するという全社的取り組みを、震災を境に始めた。
 地域間に格差 国は解決策を
 復旧は、宮城県に比べて岩手県の方が進んでいる。宮城は1周遅れの感がある。宮城の中では、石巻市が順調に進んでいるが、気仙沼市はさらにもう1周遅れている。
 気仙沼は、がれきの片付けが進みつつある程度。地盤のかさ上げは決まっているものの、進んでいない。市内加工業者の一部は高台に移転したり、グループを作って仮設工場を建て、再開にこぎ着けたりしている。
 しかし、大規模な工場ほどかさ上げを待たねばならず、手つかずの状態を余儀なくされている。
 生鮮出荷態勢は、震災前の水準に戻りつつあるが、冷凍加工は回復していない。原魚水揚げが不十分なためだ。明確なスケジュールを立てられずにいる。
 岩手と宮城の違いは、建築制限の有無だ。宮城は制限が大きい。ただ、石巻は数十センチ上げればよいとされているため、工場建設に着手できた。気仙沼は1.5メートルのかさ上げが必要。水産庁の漁港区域整備事業で、今秋までに着手すると聞いているが、少しでも前倒しされることを望んでいる。
 漁港整備が遅れるほど地域復興が遅れる。まだ稼動を再開できていない会社は、ブランドを維持するのが大変だ。今年もこのままでは、被災地域間格差がさらに拡大してしまう。国は、既存の枠を超えて柔軟な対策を講じてほしい。