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2014年9月3日 みなと新聞

阿部長商店 復興加速へ 気仙沼食品が本格稼働
機能集約し基幹工場を復旧 生鮮から冷凍、加工まで一貫生産

 阿部長商店(宮城県気仙沼市、阿部泰浩社長)が気仙沼市潮見町に建設していた「気仙沼食品」がこのほど竣工、本格稼働を始めた。気仙沼には生鮮、冷凍、加工、冷蔵保管など機能別に工場を有し、同社水産事業の中核を担っていたが、震災で壊滅的な被害を受け、一部の事業を除き、復旧が遅れていた。震災から約3年半、創業の地でもある気仙沼での本格的な事業再開に向け、「スタートラインにようやく着いた。今からが本当の勝負」と阿部社長は身を引き締める。分散した機能を集約した工場で、気仙沼の立地を生かし、サンマやサバを主体に、生鮮・冷凍出荷から、煮魚などの高次加工品まで手掛けていく。同社グループの基幹工場として、先頭にたって復旧・復興をけん引するのはもちろん、地元気仙沼の水産業復興の一翼も担っていくものと期待される。

 阿部長グループは、気仙沼や大船渡、南三陸、石巻に10施設を有していたが、南三陸を除き、震災で壊滅的な被害を受けた。うち、7施設あった気仙沼は、「サンフーズ気仙沼」が2012年に事業を再開しているが、鮮魚・冷凍出荷を手掛ける主力の気仙沼工場などは土地の問題もあり、本格復旧が遅れていた。
 しかし、水産加工施設の集積地として、気仙沼魚市場前の南気仙沼地区(約18ヘクタール)のかさ上げ工事が進み、同市潮見町の旧気仙沼中央公民館用地の一部を含む土地を取得。中小企業庁のグループ補助金を活用し、市内各地に分散していた機能を集約する形で、「気仙沼食品」を建設した。サンマやサバなどの前浜物の生鮮出荷から冷凍、加工食品までを一貫して手掛ける総合的な機能を持つ工場として、8月20日から稼働をはじめた。
 気仙沼食品は鉄骨造り一部4階建てで、敷地面積1万8577平方メートル、延べ床面積1万6513平方メートル。建設・施工はフジタ、冷凍冷蔵設備はヤマダ技研、生鮮・冷凍ラインは藤田鉄工所が担当。1階はサンマやサバを中心に、生鮮出荷や鮮魚の冷凍を行い、日量約200トンの処理が可能だ。生産ラインは、鮮魚を選別するローラー選別機に段ボール箱詰めラインと、冷凍パンラインを併設。さらに凍結庫(30トン×5部屋)、冷蔵庫7500トン、脱パンライン、原料や製品保管を行うチルド室などを設ける。

 日量200トン処理 サンマ、サバ主体

 鮮魚は、ローラー選別機で、ジャミから特大までを高精度に選別し、生鮮と冷凍向けに仕分ける。生鮮向けは、さらにコンピューター自動選別機で10段階に重量選別し、箱詰めして全国に出荷する。冷凍は養殖魚の餌や、加工原料、輸出向けなど仕向け先ごとにサイズ選別し、凍結庫で急速凍結し保管する。魚の保管や処理には、滅菌冷海水を使い、水を活性化する特殊装置を通水させる。これにより、高い鮮度保持や、酸化変色を抑えるなどの効果を発揮するという。
 冷蔵庫は3部屋に分かれ、総庫腹量7500トン(マイナス30度)で、冷媒は環境に配慮し、アンモニアを使用する。冷却方式は天井ヘアピンコイル式を採用。天井の配管に冷媒を通して庫内を冷やすため、冷風式に比べ、庫内の温度変化が小さく、冷風も直接当たらず、乾燥や色あせ、冷凍焼けなども防ぐ。
 2階は煮魚などを製造する加工場で、フィレーなどに加工する1次処理ラインや、トンネル型フリーザー、スチームオーブン、レトルト釜、自動包装ラインなど最新鋭の設備を備える。加工室は1次処理を行う「汚染区」と加工を行う「衛生区」に区分けし、衛生管理を徹底する。サンマの煮魚を主体に製造する計画で、常温のレトルト食品の他、鮮度感のあるチルド品も手掛けていきたい考えだ。加工は排水処理施設の整備が遅れているため、来年1月からスタートする予定だ。

 煮魚など食品加工 来年1月から開始

 3階には貯氷室(200トン)、4階には日産60トン製氷する施設も整備した。従業員の労働環境にも配慮し、作業負担の軽減や、空調の完備、休憩室を広く確保するなどした他、3階には災害時に避難できるスペースも設けた。「水産を魅力ある仕事にするため、大船渡食品での成功事例を基に、工場の快適さ、仕事のしやすさを追求した」(阿部社長)
 気仙沼食品のかじ取りを担っていく、現場責任者の名牛雄樹工場長代理は「気仙沼食品は、生鮮から冷凍、加工食品まで、地元に水揚げされた水産物を最大限に生かした取り組みを行っていく。また、ソフト面では人材育成に力を注ぎ、後継者の育成にも努めていく」と力を込める。
 また、気仙沼食品の主力商材はサンマで、阿部社長からグループ全体のサンマ事業をコントロールする手腕の発揮も期待される。名牛工場長代理は「震災前から気仙沼工場でサンマに携わり、震災後も大船渡食品でサンマなどの仕入れから、生鮮出荷や冷凍を行ってきた。これまで培ってきた経験を生かしながら、グループ全体の需給を見極める立場になって、サンマのことなら『名牛に任せておけば大丈夫』と言われる存在存在になりたい」と意欲をみせ、「生鮮、加工品を含めサンマの価値を高める取り組みにも力を入れていく」と話す。

(以下略)